AIや自動運転の話を聞いたあと、「すごい」で終わらせず、自分たちの地域や仕事にどう戻すか。そんなことを考えたことはありませんか? TECH BEAT Shizuoka 2026で印象に残ったのは、新しい技術の性能よりも、未来を自分ごととして引き受ける人の姿でした。
会場で語られた本田圭佑氏の投資家としての視点、モビリティ領域の新しい挑戦、そして静岡にある製造・物流・観光などの現場力。どれも別々の話に見えて、実は「技術と生活のあいだを、誰がつなぐのか」という問いでつながっていました。
この記事は、当日の参加記録をもとに、地域企業がAIや自動運転のような新技術とどう向き合えばよいかを整理したものです。登壇内容の事実と、FilmPressoとして現場へ置き換えた考察は分けて記します。
TECH BEAT Shizuokaが示した、地域が未来の当事者になる場所
TECH BEAT Shizuokaは、県内企業とスタートアップが出会い、技術を地域でどう生かすかを考える場です。大きなイベントでは、登壇者や新しいサービスの話題に目が向きます。しかし地域にとって本当に大切なのは、会場の外で何が動き出すかです。
展示を見た製造業の担当者が、自社の検査工程を思い出す。観光事業者が、移動しづらい時間帯のお客さまを思い浮かべる。行政担当者が、安全性と利用者への説明を考える。その会話が生まれた時点で、イベントは単なる見学ではなくなります。
後者には、現場を知る人、説明する人、試す人、直す人が必要になります。
「先に信じて動く」投資の視点から見えること
本田氏は選手として活動を続けながら、早い段階から投資家としても挑戦してきました。当日印象に残ったのは、過去の肩書きを語るより、創業者がまだ言葉にしきれていない未来へどう向き合うかという姿勢です。
事業を始める人は、完成した答えを持っているわけではありません。顧客の困りごとを見つけ、仮説を立て、仲間を集め、何度も直します。投資する側にも、数字だけでは見えない熱量や継続性を見る目が必要になります。
小さな地域企業にも、この考え方は置き換えられます。AIを入れるか、動画を作るか、予約の仕組みを変えるか。最初から正解を当てるより、「誰の困りごとを減らすためか」を決め、小さく試して次の判断をする。未来を信じるとは、根拠なく大きく賭けることではなく、検証を続けることでもあります。
自動運転は、車が走れば終わる技術ではない
当日のセッションでは、newmoを含むモビリティ領域の挑戦にも話が及びました。地方や観光地では、必要な時間に移動手段を確保しにくいことがあります。運転手不足は、通院、買い物、旅行、働く場所への移動まで、暮らしと事業の両方に影響します。
だからといって、自動運転車を走らせれば解決するわけではありません。安全性をどう説明するか。事故や例外時の責任をどう整理するか。地域のタクシー事業者とどのように役割を分けるか。初めて使う人が不安にならない案内をどう作るか。技術の外側に、運用すべきことがたくさんあります。
これは自動運転に限りません。予約アプリ、AIチャット、セルフレジ、オンライン診療など、新しい仕組みはすべて、使う人の不安と現場の負担を受け止める設計があって初めて定着します。
日本の強みは、現場に残る言葉になっていない知恵
AIの基盤モデルや大規模なデータでは、米国や中国の巨大企業が先行しているように見えます。そこで同じ規模だけを競っても、地域の会社にできることは少なく感じるかもしれません。
ただ、日本には製造、建設、物流、農業、医療、観光など、長い時間をかけて培われた現場の知恵があります。機械の音の違和感に気づく。天候や工程を見て順番を変える。お客さまの表情から、先に案内すべきことを察する。こうした判断は、マニュアルに書かれていないことも多いものです。
AI活用で大切なのは、その知恵を消すことではありません。誰か一人の頭の中だけにある判断を、記録し、言葉にし、次の人も使える形にすることです。AIはその整理を速くする助けになりますが、何を残すかを決めるのは現場です。
地域実装では「技術と生活のあいだ」を設計する
ちなみにこちら、マーケ用語では「タッチポイント」っていいまして・・・。お客さまや地域の人が、新しい仕組みと出会い、理解し、使い、誰かに話すまでの接点のことです。
新技術の地域実装にも、たくさんのタッチポイントがあります。最初に見るWebページ。駅や施設にある案内。スタッフの一言。試乗や体験の受付。利用後の問い合わせ窓口。どこか一つで不安が残れば、「便利そうだけど、自分にはまだ早い」で止まります。
反対に、なぜ試すのかがわかる、困った時に聞ける、既存のサービスとの違いが説明されている。この三つがそろうと、新しい技術は特別な人だけの話ではなくなります。動画、Web、LINE、対面での案内は、それぞれをつなぐ役割を持ちます。
地域企業が今から始められる三つの確認
これなら、特別に大きな投資をしなくても始められます。AIや自動運転のニュースを、遠い技術の話で終わらせず、自社の導線やお客さまの体験を見直す入口にできます。
よくある質問
地域企業はAI導入を何から始めればよいですか?
現場で繰り返している判断、説明、確認のうち、時間や不安が大きい場面を一つ選びます。導入する道具より、誰の何が少し良くなるかを先に決めることが重要です。
自動運転や新技術の地域実装で必要なことは何ですか?
技術の性能だけでなく、安全性、利用者への説明、既存事業者との役割分担、行政とのルールづくり、実証結果を次の改善へつなぐ運用が必要です。
現場の暗黙知をAI活用に生かすにはどうすればよいですか?
ベテランの判断をすぐ自動化しようとせず、どんな場面で何を見て判断しているかを聞き取り、記録し、チームで確かめます。使える形に整理してから小さく試すと、知恵を失わずに次の人へ渡しやすくなります。
技術を、次の行動につなげるために
本田氏から静岡へ注がれたのは、表面的なエールというより、「まだできる」と考え続ける姿勢だったように感じました。地域の未来は、誰かが完成させて持ってくるものではありません。現場を知る人が、新しい技術を自分たちの課題へ引き寄せ、対話し、試し、直していく中で形になります。
FilmPressoでは、AIだけを切り出すのではなく、伝えるWeb、理解を助ける動画、関係を続けるLINE、その先の予約や案内までを横断して整理します。新しい技術を、地域の仕事やお客さまの体験へどうつなぐか。まずは現場の話からお聞かせください。
参考:AI時代の、本田圭佑さんが静岡に注いでくれたこと。|note(2026年7月26日公開)